生活保護の運用が問題に


 埼玉県桶川市で7月、生活保護を受けていた一人暮らしの79歳の女性が「クーラーは生活保護家庭にはぜいたく品」とする市役所の指示でクーラーの取り外しを余儀なくされ、猛暑によって脱水症状を起こして入院した。厚生省は、クーラーなどの生活用品は、生活保護受給者の居住地域での普及率が7割程度に達していれば保有を認める、としてきた。
しかし、個別の家庭の実情に配慮しない画一的な生活保護支給のあり方が問題になった。同省は、高齢者や障害者がいる家庭については、普及率にこだわらずクーラーの所有を認めていくことにした。
 仮設住宅の96歳・88歳夫婦、生活保護打ち切りに。阪神大震災で被災した老夫婦の保護が打ち切られたのは、生活を切り詰め葬儀費用にと見舞金や保護費から貯めてきた貯金約300万円が明らかになったため。
夫は耳が不自由、妻は体を動かすのがつらく、寝たり起きたりの日々だ。神戸市は「貯金を活用していかに自立するかを考えて欲しい」といっている。



生活保護法


[この法律の目的]
第1条:この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
[無差別平等]
第2条:すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
[最低生活]
第3条:この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
[申請保護の原則]
第7条:保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基づいて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。



生活保護の現状


 生活に困窮する国民に最低限の生活を保障し、あわせてその自立を助長する生活保護は、経済発展とともに減少し、景気変動の影響を受けつつも全体として減少してきた。1981年に厚生省は「適性化」を指示し、継続している。生活保護の「適正化」は、本来生活保護を受けるべきでない人たちが受けているのを防ぎ、適正な受給にしていくという意味だが、近年その審査が厳しく、保護を申請せず、保護を受ける権利を行使しない人々を作り出している傾向が見られる。標準世帯型の平均収入(1993年度)は実収入507,381円であり、そのひらきが問題になっている。
 生活困窮者に対し、憲法第25条に基づいて制定された生活保護法は、初めて権利としての生活権を立法化したものである。なお、公的扶助には生活・住宅・教育・医療・出産・葬祭の7種類各種加算がある。